時代により株式投資に対するイメージは変化していますが、未だに日本人が持つ株式投資のイメージは良いとは言えません。そこで、株式投資に対する悪いイメージの原因と現在のイメージを考えながら、ギャンブル・投機・投資の違いについて考えてみます。
日本人の多くは、株式投資に悪いイメージを持っています
例えば、「リスクが高そう」「ギャンブルと同じではないか」「お金持ちの人だけができる」「商才がなければ大損する」「儲かることが保証されていない」「投資に失敗すれば生活が困窮に陥る」というふうに思っている人が多いのではないでしょうか。
日本は「労働」至上社会!だから「投資」のイメージが悪い!?
確かに、投資が持っている一つの側面として、正しいとも言えるでしょう。ですが、全体を見てみると、違う部分もたくさんあります。
日本人が投資に対する偏見がある大きな理由として、宝くじのような一攫千金を狙うのを好み、社会に対してお金を出すのを好んでいない、などがあげられます。
また日本社会そのものが労働を尊いと考える価値観が強く、不労所得に見える投資で稼いだお金に対してネガティブなイメージがあるのではないでしょうか? 言い換えれば、同じお金でも労働の対価として稼いだお金は尊く、まじめに働くのが一番だ、という考えの人が多いのでしょう。
「投資」に対する知識が絶対的に不足!しかも実践的な教育も行われていません
こういった偏見があるのも、日本の株式投資に対する教育レベルが低いのが原因とも言えます。現代の日本で考えてみても、小・中学校の義務教育期間に、「投資」に対する教えを受けたことがある方は、ほとんどいないのではないでしょうか。
高校で「政治経済」の科目を選択した方は、ようやく「株」「債券」といった言葉に触れる機会があったかもしれません。
ですが概念的な理解がせいぜいで、投資というものがどういうもので労働とどう違うのか、自分の地平線から身近に捉え直すところまでいけることはほとんどないように思えます。
もちろん受験のための勉強に重きが置かれていれば、実際にどう投資するのか、どうお金を増やすのか、どんな危険性があるのか、といった、実践的な知識は重要視されません。
日本人は「投資」を知らないから「投資」嫌いにもなりやすい
このように、日本に投資文化・教育は根付いておらず、「投資」に関して実践的に学ぶ機会がないまま、社会へ出たという人の方が大半だと思います。
その結果、投資に対する知識がないまま投資詐欺事件に巻き込まれたり、投資に失敗して困窮した生活を送る人の情報に接すると、「投資」=危険、「投資」=悪、というイメージができてしまうのです。
また、投資経験のある大抵の人は、株式投資に関する知識を授けるとき、「株式投資は危険だ」「投資には手を出さない方がいい」「株式投資で破産した人もいるからやめたほうがいい」というふうに、株式投資を止めさせようとする人が多いのです。
それを信じてしまい、株は怖いものだと思い込む人もたくさんいるでしょう。
株式投資に対する悪いイメージは最初期の明治時代から続く
しかも恐るべきことに、日本人が投資を嫌う傾向はいまに始まったことではないのです。明治や大正と言ったはるか昔から、日本で株式市場そのものが始まったころから続く伝統なのです。
「株に手を出す」という表現にネガティブイメージが集約されている
「株に手を出す」という言い方がありますが、もともと、「~に手を出す」とはいい意味の使い方ではありません。例えば、「博打に手を出す」「薬に手を出す」「女に手を出す」などと言いますが、良い意味での使われ方はありません。
つまり、悪いことを始めることを「~に手を出す」と言う訳で、端的に言って昔から「株に手を出す」のは悪いことだったのです。
黎明期の日本の株式市場は暴騰と暴落を繰り返すリスクの塊
日本初の証券取引所が東京と大阪に開設されたのは1878年(明治11年)でしたから、株式投資が本格的に始まったのは明治後期からです
。
従って、株式投資に対する悪いイメージが定着したのは、明治・大正・昭和初期と考えられます。当時の日本経済は富国強兵政策で懸命に欧米諸国を追いかけていましたが、庶民はなかなか豊かにはなりませんでした。
株式投資の歴史を鑑みると、厚みの無い日本経済の中で株式相場は暴騰と暴落を繰り返した歴史があり、株式市場は非常にリスクの高い状態でした。
貴族と成金だけが儲けて庶民だけが損をするイメージ
その結果、株式投資で儲かる時期もありましたが、暴落で一気に元手を失うことも多かったことが容易に推測されます。また、当時の相場に参加できたのは一部の貴族と成金だけでしたから、庶民から見るとやっかみの気持ちもない訳ではありませんでした。
また、江戸時代から行われていた米相場や小豆相場のイメージが悪かったことも影響したと考えられます。
日本人の株式投資に対する認識は変わりつつある?
株式投資に対する悪いイメージは戦後も続き高度経済成長の後の昭和50年代まで、証券会社や証券会社社員は株屋と呼ばれたものです。この株式投資のネガティブなイメージは、それでも少しずつ改善されてきています。
バブル期にグレーな「株屋」からエリート「証券マン」へイメージが変わった
その株屋が証券マンに変わったのはバブル期からです。バブル経済で株価が上昇する期間が長く続き人々の株式投資に対するイメージにも変化が見え始めました。
実際に個人投資家が儲った訳ですからイメージが変わるのは当たり前ですよね。バブルの結果、証券マンの給料は銀行マンを追い抜いてトップクラスの金額になり、もはや、株屋などと呼べなくなってしまったのです。
2000年以降のネット全盛時代に株式投資に対するハードルが下がった!
NHKのニュースで日経平均株価やドル円相場の速報を流す様になったのもこの時期からで、人々の株式投資に対する関心が高まったことを物語ります。しかしながら、その後のバブル崩壊とゼロ成長時代を経て株式投資に対するイメージは再び悪化しました。
しかし1996年からの「金融ビッグバン」を経て、アベノミクス相場で日経平均は10,000円台から二倍の20,000円にまで倍増しました。単純に考えて株式投資をしていれば資産が二倍に増えたのです。
そして2000年以降のインターネット時代、スマホ時代となり、ネット証券会社や手数料の安いネット取引が増え株式投資は新時代に突入しています。
令和は新たな投資ブームの始まり!?庶民も株式投資が必要
新しい流れとして株式投資へのムーブメントが生まれようとしているのは事実です。しかし、まだまだバブル期のような株式投資ブームが到来するかどうかは分かりません。ただ令和になって認識が変わってきているのは確かです。
まだまだ日本人は株式投資に目覚めていない
現在の株式投資に対する考え方も基本的には大きな変化は見えません。それは、直近2016年6月末の日銀資金循環統計に於いて、個人金融資産の総額は1,746兆円で、内訳は現金・預金920兆円(52.7%)・証券258兆円(14.8%)・保険年金520兆円 (29.8%)・その他49兆円(2.8%)となっていることからも解ります。
つまり、ゼロ金利政策が続く現在に於いても、預金から証券に資金が移動する兆候はありません。
新しい株式投資ブームが到来する!? 新世代の投資家が誕生
しかしながら、現在のゼロ金利状態が更に続くとなると状況が変化する可能性は有り得ます。今後、団塊の世代以降のインターネットに慣れた世代が続々と高齢者の仲間入りすることから、比較的、お金に余裕のある世帯が株式投資を増やす可能は秘められていると考えられます。
特に、この世代はバブル期に株式投資で儲けた経験を持つ世代ですから、いよいよ、預金から株式への資金移動が始まるかもしれません。
老後の資産形成に投資は不可欠!令和時代は堅実な株式投資がブームに!?
さらに令和になって、株式投資は新たなブームを引きおこそうとしています。決定的なのは金融庁が老後30年間で「約2000万円の金融資産が必要」となるという報告書を発表したことです。2,000万円という金額を夫婦2人の労働のみで貯蓄することは、極めて困難です。
だからこそ行政もNISAやジュニアNISAなど、株式投資のハードルを下げて、庶民に投資を促しています。庶民たる私たちの中でも危機感から、自ら資産を形成する株式投資への関心が高まっているのです。