何事も目的を決めなければ行動は起こせません。しかも、「幸せになりたい」とか「お金持ちになりたい」と言う様な漠然とした目的ではなく、1年後・3年後程度の近未来の具体的な目的を決めることが大事です。そこで、投資目的の決め方について考えてみました。
自分の現状を知る
個人金融資産
直近2016年6月末の日銀資金循環統計によりますと、個人金融資産の総額は1,746兆円で、内訳は現金・預金920兆円(52.7%)・証券258兆円(14.8%)・保険年金520兆円 (29.8%)・その他49兆円(2.8%)となっています。
ここ数年、金融資産内訳の大きな増減は無く、株式や投資信託の割合は全体の14.8%と伸び悩んでいます。しかしながら、相変わらず現金・預金が52.7%と金融資産全体の半分を占めていますが、これはゼロ金利時代の現在に於いては全く運用しないで放置しているのと同じ状態です。従って、今後、この現預金の920兆円が動き出すかもしれません。
1人当たりの金融資産
2015年の「アリアンツ・グローバル・ウェルス・リポート」によりますと、日本人の1人当たりの金融資産は約1,100万円でスイス・米国・英国・スウェーデン・ベルギーに次ぎ世界6位に位置しています。従って、夫婦2人で2,200万円程度の金融資産を持っている家庭が平均値と言え、勿論、これには不動産は含まれていません。
そこで、上記の現金・預金52.7%や株式・投資信託14.8%・夫婦2人で2,200万円程度の金融資産が平均値であることなどから、一人ひとりの投資目的が見えて来るのではないでしょうか?例えば、現金・預金の割合が髙過ぎる場合は株式などのウェートを増やす必要がありますし、年齢にもよりますが金融資産が平均よりも少ない家庭は節約しつつ積極的な運用に力を入れなければなりません。いずれにしても、現状をしっかり見極めれば、自ずと投資目的が見えてきます。
近未来のゴールを設定する
現状分析が終われば自然に課題が浮き彫りになってきますが、この現状の課題に現在の収入と年齢を考え合わせれば漠然とした目標が見えてきます。
一般的な人生の資金的な山は以下の通りですので、近未来のゴールとして設定できます。
- 結婚資金
- 子供の教育資金
- 自動車購入資金
- 住宅購入資金
- 家族旅行資金
- 独立起業の資金
- 病気の備え
- 老後のための資金
これらの資金確保を近未来のゴールとして設定し、3~5年で達成するための計画作りが考えられます。例えば、3年で住宅購入の頭金として現在の300万円を500万円に増やす計画を立てた場合、各年の目標額と各月の目標額までの落とし込みが必要です。
また、特に、65歳以上の高齢者で老後の資金を増やす場合は、リスク限定で3年程度の目標設定が必要になります。
リスク許容度に合った運用スタイルを探す
リスク許容度
そして、大事なことは、当然のことながらリスク許容度に合った運用スタイルを見つけることです。リスク許容度とは収益がマイナスに振れてしまった場合、どれくらいまでならマイナスになっても受け入れることができるかという度合いを意味します。
つまり、「どれくらい投資元本がマイナスとなっても生活に影響がないか」「どれくらいまでなら投資元本がマイナスとなっても耐えられるか」ということです。リスク許容度に関するあるアンケート調査の結果は以下の通りです。
35歳未満 | 35歳~54歳 | 55歳以上 | |
---|---|---|---|
リスクの大きい投資ができる | 2% | 1% | 1% |
ある程度リスクのある投資ができる | 14% | 18% | 8% |
リスクは許容できない | 54% | 57% | 71% |
リスク許容度に合った運用スタイル
リスク許容度は年齢・家族構成・資産・年収・性格・経験などで違ってきますので、極論すれば人それぞれで異なることになります。
只、一般的な傾向としては年齢が低く資産が多い人ほどリスク許容度が高くなり、高齢者で資産が少ない人ほどリスク許容度が低くなります。上記のアンケート結果では35歳未満でリスクを許容度できない人が54%もあるのは驚きで、これではハイパフォーマンスで資産を増やすことはできません。従って、自身のリスク許容度を把握し金融商品別のリスクとリターンをキッチリ理解することが前提ですが、それに加えて運用期間を明確に定めた上で金融商品を選ぶことが求められます。
リスクとリターンは刻々と変化する
リスクとリターンの把握
近未来のゴールを設定し運用スタイルを探すところまでは誰でもたどり着くことができますが、問題は具体的な運用スタイルの選択です。只、運用スタイルの選択の前に個々の商品のリスクとリターンを把握することが大事です。一般的にリスクとリターンは以下の様に分類できます。
ハイリスク・ハイリターン(年率±30%~50%)
株式(小型株)・株式先物・債券先物・外国株式・外国債券・外貨建投信・FX
ミドルリスク・ミドルリターン(年率±10%~20%)
株式(大型株)・投資信託・ラップ・確定拠出型年金・外貨預金
ローリスク・ローリターン(年率±0%~5%)
国債・その他の国内債権・銀行預金・貯蓄性保険・郵便貯金
リスクとリターンの変化
上記のプラス・マイナスの年率は多少前後して考える必要があります。また、国債や銀行預金をローリスク・ローリターンに分類するのに異論があるかもしれませんが、現在の金融情勢では国債を途中換金した場合に売買損失が出る場合が有り得ます。更に、銀行と保険会社は、非常に確率は低いです経営破たんのリスクが考えられます。
そして、もっと重要なことは上記のハイリスク・ハイリターンの金融商品やミドルリスク・ミドルリターンの金融商品は、金融情勢によっては更にリスクとリターンが増幅される場合があります。
例えば、2008年のリーマン・ショックの様な世界的な通貨危機や経済危機の場合や、1990年の日本のバブル崩壊の時などです。この様な時にはミドルリスク・ミドルリターンに分類された株式(大型株)・投資信託がハイリスク・ハイリターンになる場合がありますし、ハイリスク・ハイリターンの金融商品のリスクが更に高くなる場合があります。
特に、最近の為替の動きは株式を上回る局面がありますので、外貨建の株式・債券・投資信託のリスクは急激に高まります。それらのリスクの動きを確認するにはVIX指数の動きを確認すると解り易いです。
通常、VIX指数が20を超えて来ると警戒入りで30を超えると株式や外貨建金融商品などのリスク資産は要注意となります。VIX指数はこちらで見ることができます。また、過去の有事のVIX指数は以下の通りです。
年月 | VIX指数 | 名称 |
---|---|---|
1997年10月 | 38.20 | アジア通貨危機 |
2002年8月 | 45.08 | ワールドコム破綻 |
2008年9月 | 31.7 | リーマンブラザーズ破綻 |
2008年11月 | 80.86 | NYダウ暴落 |
2011年10月 | 45.45 | ギリシャ国債デフォルト |
まとめ
投資目的の決め方の順序としては、以下の順序が考えられます。
- 自身の現状を把握する
- 近未来のゴールを決める
- 自身のリスク許容度を把握する
- 金融商品のリスクとリターンを確認する
- 具体的な投資目的を設定する
そして、できれば投資信託やラップ・確定拠出型年金・貯蓄性保険の様に運用を他人に「丸投げ」する金融商品は避けた方が無難です。少なくとも高い運用手数料分だけ運用利回りが低くなることは間違いないからで、自分で勉強しながら運用する方が将来のためになるからです。