さまざまある株式投資スタイル
安く買って高く売ることが株式投資の原則ですが、利益を得るには様々な投資スタイルがあります。そもそも、キャピタルゲインを狙わない投資スタイルも数多く存在しますが、これだけ多くの投資スタイルがあるからこそ買う投資家もいれば売る投資家もいて市場の厚みが増しているのです。そして、株式投資初心者の場合、最初は1つの投資スタイルに徹することが大事で次第にスタイルを多様化させるのがコツと言えます。
- キャピタルゲイン狙い
- 配当・優待狙い
- 裁定取引(アービトラージ)
キャピタルゲイン狙い
短期トレード
キャピタルゲインを狙うことこそが株式投資の醍醐味ですが、投資スタイルは様々です。
まず、短期トレードには1日で売買を完結するスキャルピングトレードとデイトレードがありますが、スキャルピングTが数秒から数分で売買を手仕舞うのに対してデイTは数分から数時間で手仕舞うトレードです。つまり、スキャルピングTの方がより短期の売買となりますので、必然的に投資資金やレバレッジは大きくなります。
また、スキャルピングTは1分足チャートや5分足しか見ませんし、最近は自動売買システムを使う場合が多くなっています。一方、デイトレードは時間足や日足に加えて企業の決算発表やニュース・相場の流れも見なければなりません。
いずれにしても、相場の上級者・セミプロしか踏み込めない領域ですが、これらに加えて1~2週間で売買を手仕舞うスイングトレードも短期トレードの範疇です。
中長期トレード
中長期トレードは最も一般的なトレードで1~3ヶ月で売買を手仕舞う中期トレードと3~6ヶ月以上の長期トレードに分けられます。
現在でも個人投資家の大部分は中長期トレードを行っており、基本的に短期トレードは上昇する銘柄を買う順投資であるのに対して中長期トレードは株価の安い銘柄を狙う逆張り投資が主体となります。従って、中長期トレードは、より業績やチャート・テクニカル指標が重要になってきます。
バリュー投資
主に中長期トレードの投資家の銘柄選択に於いて、その時の相場の中で現在の株価が割安な銘柄を探して投資する方法をバリュー(Value:価値)投資と呼んでいます。
バリュー投資は株式投資の安く買うという原則に最も相応しい投資スタイルと言え、本来ならもっと高い株価である筈の割安株を見つけることができます。
グロース投資
そして、バリュー投資に対比されるのがグロース(Growth:成長)投資で、グロース投資は株価が割安であることよりも企業の成長を重視する投資方法です。
従って、長期投資が前提となり将来の成長が有望な銘柄であれば現在の株価水準が高くても買っていくことになります。例えば、1997年に上場したヤフー(4689)の株価は右肩上がりで上昇しましたが、同時に2003年9月から2006年3月まで半期毎に1株→2株の分割を繰り返しました。つまり、この時期にヤフーにグロース投資した投資家の資金は何倍~何十倍にも増えた訳です。
IPO投資
ここまでの投資スタイルと少し違うのがIPO(新規上場)投資です。通常、IPO投資はIPO銘柄の公募株を買い、上場初値か前後の水準で利益確定する投資スタイルを意味します。
例えば、今年の7/15 に上場したLINE(3938)の公募価格は3,300円で初値は4,900円でしたから、公募価格で買い初値で売った投資家のパフォーマンスは+48.5%でした。この様にIPO銘柄の公募株は値上り益が期待できるため、人気銘柄の公募株は購入希望者が殺到し何十倍~何百倍の抽選倍率になることも珍しくはありません。
実際に他の投資スタイルには見向きもせずに、IPO投資に専念する投資家も多く存在しています。
配当・優待狙い
いずれにしても上記の投資スタイルはキャピタルゲイン(値上益)狙いの投資スタイルでしたが、ここからの投資スタイルはキャピタルゲイン狙いではありません。
配当狙い
まず、配当狙いの基本は長期投資前提で毎期毎の配当を受け取る投資スタイルです。
また、グロース投資の場合も成長性のある銘柄に長期投資し毎期の配当を受け取ることになりますが、長期投資の場合でも株価が急騰した局面では、一旦、利益確定することも可能です。更に、長期投資を前提にしないで期末に配当目的で狙いの銘柄を購入し、配当権利落ち後にトントンで売り抜ける手法も多く見受けられます。つまり、配当分のみを狙ったトレードで、1~2週間の保有で半期や年間の配当を取りますから所有期間利回りは非常に高くなります。但し、相場が好調で上昇局面の時にしか使えない手法です。
株主優待狙い
同様に特定の銘柄の配当+株主優待目的で長期投資する投資家も少なくありません。
例えば、ANAやJAL・オリエンタルランドなどの株主優待券を狙う投資家も多いのです。
株主優待タダ取り取引
更に、現物取引と信用取引を組み合わせれば株主優待をタダ取りする高等戦術も可能です。
例えば、株価1,000円で決算期末の12月末に5,000円相当の株主優待食事券を配布しているA社を例に以下で説明します。
まず、12月末の権利付最終日にA社株を100株現物で買い入れ、同時同値で信用取引の売り建てを100株入れます。これで12月末の5,000円相当の株主優待券は確定しました。
そして、翌日の権利落ち日に信用取引の売り建て100株に対して現物で買った100株を現渡しすれば両建ては解消され4日後に売却代金が手元に戻ってきます。
その後、3ヶ月ほど待っていれば5,000円の株主優待食事券1枚が郵送されてきます。
上記のスキムで実際に株主優待券をノーリスクでゲットしている個人投資家は少なくありません。このスキムは厳密に言うと以下で説明する裁定取引(アービトラージ)です。
裁定取引(アービトラージ)
裁定取引とは
裁定取引(アービトラージ)とは、買いと売りを両建てすることにより利益を得る投資手法です。例えば、実際には有り得ませんが、3月の決算期末になると株価が同じ水準になるA社とB社があるとします。仮に、2月末にA社の株価がB社の株価を10%下回っているとしますと、2月末にA社株買い・B社売り(空売り)を100株ずつ仕掛け、3月末に株価が同水準に落ち着いたところで反対売買して決済しますと10%分の利益が残る筈です。
この裁定取引(アービトラージ)の強みは、株価の上昇局面に於いても調整局面に於いてもスキムは有効であることです。
例えば、上記のA社とB社の場合、2月末に比べて3月末の株価が上昇していても下落していても関係ありません。只、A社とB社の株価が例年通り3月末に同じ水準に落ち着いてくれれば必ず10%分の利益が残る筈です。
上記のスキムは銘柄間裁定取引(ペアトレード)と呼ばれ、同じ業種の銘柄間や異業種の銘柄間で盛んに行われています。勿論、信用取引を使えば個人投資家も使える投資手法です。
指数裁定取引
この様な裁定取引を最も頻繁に使うのはヘッジファンドで、特に、先物を使い指数間で盛んにサヤ取りが行われています。最も一般的なのがTOPIX先物と日経平均株価先物を使った指数裁定取引や債券先物と株式先物間での指数裁定取引です。また、債券先物・株式先物・原油先物間の裁定取引も少なくありません。
まとめ
上記の様に株式投資スタイル(株式投資手法)には様々なスタイルがありますが、大事なことは得意な手法に徹する姿勢です。1つの投資スタイルを3ヶ月試し、儲からないから次のスタイルを試すということでは得意な手法はなかなか見つかりません。
従って、少なくとも年単位で1つの投資スタイルに徹する姿勢が重要です。ベテラン個人投資家の中には上記の1つのスタイルだけを数十年継続している投資家もおり、驚くべき成果を上げている人も多いのです。