本来、株式投資の原則は投資家一人ひとりで違うものかもしれません。投資家一人ひとりには個性があり考え方が違う上に経済状況も異なるからです。そこで、ここでは株式投資初心者にとって、株式投資の原則はどうあるべきかを考えてみました。
自己責任原則の本当の意味を理解する
他人に任せず自分の意志で運用することが大事
最近、投資に限らず様々な分野で自己責任について言われていますが、株式投資に於ける自己責任は直ぐに結果が出る点が他とは異なります。例えば、銘柄を売買した場合は利益か損失という形で結果が出ますので、投資家は直ぐに自己責任を負うことになります。
只、損失が出た場合に「自分の銘柄選択が悪かった」と反省できる人は稀で、多くの人は他人に責任を転嫁しようとします。例えば、銘柄を奨めた証券マンや推奨していた雑誌やネット記事などです。
つまり、他人の情報を鵜呑みにして買った場合も自分の相場観で買った場合も全て自分が責任を負わなければなりませんから、それなら最初から自分の相場観で投資した方が納得できる筈です。従って、大事な自分の資産運用ですから、他人任せにしないで自分の意志で運用することが自己責任原則の入口と言えます。
常に自分の土俵で戦うことを考える
戦国武将の武田信玄の不敗神話は有名ですが、一方で不利な戦には決して挑まなかったと言われています。調略を多く用い相手の戦力を削ぎ自分の都合の良い時期に戦う、つまり、自分が勝てそうな自分の土俵で戦える戦しかしなかった訳です。
同様に株式投資の世界も個人投資家から見ると、外国人投資家や銀行・生損保・事業会社・ヘッジファンド・年金と周りは強敵だらけです。
従って、これらの強敵と戦うには常に自分が得意としている状況や方法、つまり、自分の土俵で戦うしかありません。例えば、株式デビューの人の場合でも自分が勤務している会社については熟知している筈で、まさしく自分の土俵です。
昔の話ですが、社員が自社株を買いに来ると証券会社の支店で話題になったもので、下手なアナリストの講釈を聞くよりも頼りになる情報でした。
従って、株式デビューの人の場合でも自社株に限らず業界の情報や専門分野や何がしかの専門情報がある筈で、他人の情報を頼りにするよりもよっぽど良い情報を持っている場合が少なくないのです。
貪欲に収益性を追う
安く買い高く売るのが鉄則
当たり前のことですが株式投資は貪欲に収益を追求しなければ、継続して利益を上げ続けることはできません。その意味で最も根底にある株式投資の鉄則は安く買い高くなったら売るということす。
実はこの最もシンプルなことが中々実践できない訳で、誰もが上がって来た高値の銘柄に手を出し大火傷をした経験を持ち合わせています。
従って、どの様な局面でも安く買い高くなったら売るという原則を忘れないことです。勿論、信用取引や先物取引に於いては先に売り買い戻すこともできますが、順序が逆になるだけのことで高く売り安く買うことは同じです。
複利運用を忘れない
銀行預金に於いても株式投資に於いても投資で増えた分を再投資するのが複利運用で、複利運用は雪だるま式に増える最も効率のよい投資方法です。
只、凡人は少し財産が増えると直ぐに使いたがるのが常で、特に、株式投資に於いては「株で儲かったから海外旅行に行こう」などと気が大きくなります。
ところが、株式投資で常に儲かっていれば良いのですが損をすることもあります。その結果、儲かった分は使い果たすので元本は増えず損をすれば元本が減る訳ですから、結局、株式投資で資産は増えないこともよくある話です。
従って、儲かった分には手を付けず元本を増やすことを意識しなければ資産は増えません。
常に安全性に注意を払う
どんな金融商品にもリスクとリターンがある
この世の中にはノーリスクで100%儲かるものなどある筈もありません。仮に、もし、そういう話があるとすれば嘘か詐欺と思わなければなりません。
現在、世界最高水準のヘッジファンドの運用パフォーマンスは年平均で+30%程度の運用ですから、これを超える話はマユツバと考えた方が良いのです。しかしながら、この世界最高水準のヘッジファンドにしても年平均で+30%程度の運用が確定している訳ではなく、+30%程度のリターンには-30%のリスクが伴います。
つまり、国債や郵便貯金や銀行預金も含めて、程度の差こそあれ全ての金融商品にはリスクとリターンがある訳です。
例えば、株式の場合、東証1部銘柄のリスクとリターンを±20%程度とすると、新興市場銘柄は±50%になるかもしれません。また、銀行も破たんリスクがありますから、±3%程度のリスクとリターンを考えなければなりません。過去の歴史を見ると日本の国債が紙くずになったこともありましたので、決して国債や郵便貯金のリスクもゼロでは無いということです。
分散する
昔から分散投資については諸説ありますが3分割するのが基本で、仮に資金が1,000万円あるとすれば銀行預金と国債と株式に330万円ずつ投資することになります。或いは、銀行預金・株式・不動産に3分割する分散投資です。そして、株式の330万円を更に110万円ずつ3銘柄に分散投資することになります。
いずれにしてもリスクの高いこの世のなかですから人々は様々な形で分散投資しています。個人投資家の最近の流れは通貨別に分散することや、海外の租税回避地に分散する人が増えています。また、最近のヘッジファンド理論によりますと、株式の分散投資は12%ずつに分けるという考え方も増えています。例えば、資金が1,000万円あるとすれば、120万円×8銘柄ということになります。
どんな時でも流動性を確保する
株は売り買い自由
例えば、今年の11/10に日経平均株価は1,092円高し出来高は32億株でした。この日の新聞には「東京市場は買い一色」などの見出しが躍りました。しかしながら、冷静に考えると確かに日経平均株価は前日比で1,092円高し32億株の買い物があった訳ですが、同時に32億株の売りもあったことになります。つまり、どんな上昇相場に於いても売っている投資家は存在し暴落相場に於いても買っている投資家は間違いなく存在しています。従って、現実には買一色の相場など有り得ないのです。
買いたい時に買い売りたい時に売る
最後に株式市場で最も大事なことは、投資家が買いたい時に買い売りたい時に売れる市場であることです。そのためには市場規模も重要な要素となってきます。市場の時価総額が大きく上場銘柄数が多い市場が信頼性の高い市場と言えます。その意味でNY・東京・ロンドンが最も信頼性が高いと言え、中国の上海市場は規模はありますが政府の介入が多過ぎて正常な市場原理が働いているとは言えません。
つまり、正常な市場原理が働くためには市場規模と民主的な政府がなければなりません。
例えば、韓国株式市場は民主的な政府が管理していますがサムスン電子の時価総額が市場全体の1/3を占める歪な市場ですから、正常な市場原理が働くとは思えません。
また、NY・東京・ロンドン市場に於いても、新興市場銘柄の中には値付きが悪い銘柄も少なくありません。従って、極端に出来高の少ない銘柄の投資は控えるか少ない金額にしなければなりません。