信用取引で生まれるメリットその1—手元に資金がなくても狙った銘柄を買える
ある銘柄を現物買いで購入して株式投資するためには、株価×売買単位分の資金が必要となります。10万円や20万円といった銘柄もありますが、中には投資するための最低必要資金が数百万円という銘柄も有ります。
株式投資においては複数の銘柄に投資してリスクを分散するのが一般的ですから、1つの銘柄に数百万円も資金が必要となると個人投資家にとってはなかなか手を出すのが難しいと言わざるを得ないでしょう。
しかし、信用買いであれば預けた保証金の最大3.3倍まで株式を売買することが可能です。例えば、30万円の資金があれば100万円まで、100万円の資金があれば330万円程度までの銘柄を購入できます。
信用買いは手元資金以上の額を投資するもので、借金を背負ってしまうリスクがありますが、今大きく株価が動いている銘柄を、手元資金不足で購入できず、ただ見守るしかないという状態に陥りかねない時にだけ利用するのであればそう借金を背負ってしまうほどの損失を被ることはないと言えるでしょう。
現物株の予約買いとしても使える
信用買いは、株主優待等に魅力を感じ長期保有したいと常々考えていた銘柄が何らかの理由により急落したものの、現段階では手元に資金がないといった時に現物買いの予約買いとして利用することもできます。
手元にある資金を保証金として差し入れ、信用買いをしておき、数日後に手元に資金ができた段階で現引することができます。
返済 | 信用買で借りた資金を返すために建玉を売却する方法 |
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現引 | 信用買で買った株式分の代金を支払い現物化する方法 |
信用取引で生まれるメリットその2—デイトレードなら手数料無料で取引できるサービスも
過去信用取引は1日のうちに何度も取引を行うデイトレードに利用することができませんでしたが、2013年から信用取引の制度が変わり、同じ保証金を使って何度も取引ができるようになりました。
この制度の開始に合わせて松井証券がスタートした「一日信用取引」を活用すればデイトレードに限り信用取引の手数料は無料で、金利・貸株料も1注文あたりの約定代金が300万円未満であれば2%、300万円以上であれば0%とお得な設定となっています。
ただし、このサービスの問題点は翌日以降に決済が持ち越された場合、約定代金の1.05%、50万円の約定でも5,250円もの手数料がかかってしまうという点です。翌日に持ち越す可能性がある場合には通常の信用取引で取引を行うようにします。
松井証券の他、SBI証券では50万円まで信用取引手数料が239円、マネックス証券では1日何回取引をしても一律2,500円などとなっています。
信用取引で生まれるメリットその3—空売りで株価下降局面でも儲けられる
信用取引に取り組む一番のメリットと言っても良いのが、空売りで株価下楽局面でも儲けられる、ということです。
空売りは信用取引に売りから入る方法で、株式を証券会社から借りてきて、先に高く売却して、後で安く買い戻すことで利益を出す取引方法です。
空売りで利益が出るまでの流れは以下の通りです。
- 証券会社から株式を借りる。
- 借りた株を80万円で売却する。
- 借りた銘柄が60万円まで下がったところで反対売買する。
- 株価の下降局面で20万円の利益を得られる。
もちろん、借りた株式の株価が上昇してしまえば上昇した分が損失となってしまいます。
株価は上昇と下降を繰り返す
株価はどんな銘柄であっても必ず上昇と下降を繰り返します。
上昇トレンドにある銘柄であっても、10日上昇した後5日下落するなど、細かな上下がありますし、上昇トレンドの後下降トレンドに入ることもあります。
経済情勢や業界の流れ、個別銘柄の内容などさまざまな要因を排して考えるとある銘柄の株価が1分後に上昇するか下降するかの確率は50%ずつだと言えます。
現物取引だけであれば「上昇する」に投資することしかできませんが、空売りを利用すれば単純に利益を出せる可能性が2倍に増えるのです。
信用取引はリスクがあるため現物売買だけ行いたいという方でも空売りのやり方だけは是非覚えておくようにしましょう。
信用取引で生まれるメリットその4—つなぎ売りで保有株式の値下がりリスクを回避する
信用取引には、現物取引で継続保有を考えている銘柄の株価下落が予想される際に、同じ銘柄を信用売りする「つなぎ売り」で値下がりリスクを回避することができます。
つなぎ売りを株主優待後の権利落ちに備えて仕込んでおくことでリスクなしで株主優待を手にする方法もありますし、うまく高値で売却して、安値で買い戻すことができれば利益をさらに積みますこともできます。
空売りによるつなぎ売りを有効活用できる場面は多々あるのでその仕組みをよく理解しておくようにしましょう。
信用取引で生まれるメリットその5—株主優待のタダ取りを狙える
信用取引で生まれるメリットその4で少し触れていますが、空売りを活用することで株主優待のタダ取りを狙うことができます。
配当金や株主優待は一般的に同じ日に権利が確定し(権利付き最終日)、権利付き最終日の翌日は配当金や株主優待の価値の分だけ値下がりする権利落ちが起こります。
これにより、権利付き最終日の前日に購入して、翌日に売却することで配当金や株主優待分だけ利益を得ることができなくなっています。
しかし、空売りと現物買いを組み合わせることで株主優待をノーリスクで受け取ることが可能となります(この方法では配当金は受け取れません)。
空売りと現物買いを同時に仕掛けることでノーリスクで株主優待を受け取れる
空売りを活用してノーリスクで株主優待を受け取るためには、株主優待のタダ取りを狙う銘柄に対して、権利付き最終日の前日の取引終了時間(権利付き最終日15時〜)から翌日の取引開始時間(権利落ち日9時)までの間に同時に空売りと現物買いを仕掛けます。
この時間帯であれば多少時間がずれたとしても株式市場が閉まっているため同じ株価で注文を出すことができます。
気をつけておきたい逆日歩
この方法では、ノーリスクで株主優待を受け取れるとはいえ、現物買いと信用売りの売買手数料は支払う必要があります。
また、信用売りが多すぎて証券会社の株が不足した場合に、証券会社が信用売り用の株式を調達するために要した手数料である逆日歩にも注意が必要です。
空売りにより株主優待のタダ取りは広く知れ渡っているため、特に人気の株主優待銘柄ではこのタイミングで逆日歩が発生する可能性は高くなります。
なお、逆日歩は証券取引所がルールを定めた制度信用取引で発生しますが、一般信用取引では発生しません。
この方法を利用する際はできれば一般信用取引を利用するようにすると良いでしょう。
まとめ
信用取引はハイリスク・ハイリターンな取引ですが、空売りを現物買いを組み合わせる方法など現物取引と組み合わせることでリスクをコントロールする方法もあります。
株式投資を始めるにあたって、こうした信用取引の活用方法をしっかり理解しておくようにしましょう。