株式投資とギャンブルの違いは「偶然性」のリスクの違い
株式投資がギャンブルか否かは古くて新しいテーマで、そもそも、株式投資がギャンブルだと思っている人も多いです。しかし、株式投資はギャンブルではありません。本質的な違いは経済活動と娯楽(遊び)の違いですが、「偶然性」のリスク管理という面でも大きく違います。
ギャンブルは公平性を保つために「偶然性」をコントロールできない!運否天賦!
まず、最初に指摘したいのは、ギャンブルにおける「偶然性」が占める割合についてです。ギャンブルは公平性を保つために「偶然性」が占める要素が大きくなっています。
例えば、丁半博打のサイコロの出目は全て偶然性が占めているのではないでしょうか?中にはサイコロの出目を調節できる達人もいるようですが、それはイカサマ博打の世界です。また、カジノのルーレットやスロットマシンも同様です。公平性を保つために、ギャンブルは操作の余地を極力、排しています。
偶然性が占める割合を逆の立場で考えますと、参加者はギャンブルの勝ち負けを殆どコントロールすることはできません。勿論、ギャンブルにすこぶる強い博才のある人も実際には存在しますが、殆どの参加者はギャンブルの勝ち負けは全て運に任せています。
公営ギャンブルだけはちょっとだけ偶然性をコントロールできる!でも限定的!
只、競輪、競馬、競艇などの公営ギャンブルと、パチンコ・スロットなどは、やや、趣が異なります。何故なら、競輪は乗り手・競馬は騎手と馬・競艇も乗り手とボート・パチンコは釘の位置などの要素があり、それらを読むことで勝率を上げることもできます。
つまり、偶然性が占める割合を考えた場合、丁半博打・ルーレット・スロットマシンを100%としますと、競輪、競馬、競艇、パチンコなどの偶然性は少し下がる筈です。しかし投資と比べれば、遙かに偶然性に支配されていると言えるでしょう。
株式投資は「偶然性」をコントロールできる!不要なリスクとして極力排除する!
株式投資に於いても偶然性はゼロではありません。しかし投資においては基本的には「偶然性」の要素はリスクとしてコントロールされています。そして投資に関するすべての情報が平等に公開されてオープンにされています。
株式投資は偶然性による公平性を必要としません。公平公正な場を作り、誰でも情報にアクセスできることで、投資の公平性を保っているのです。ギャンブルとは公平性に関する考え方が真逆です。
投資家による株式投資のリスク管理方法
ギャンブルの公平性は「偶然性」によって保たれます。そのためギャンブラーは自分で十分にリスクを管理することができません。運否天賦というように、偶然性は天に任せるしかないのです。一方で投資家は株式投資のリスクを様々な方法で軽減・コントロールすることができます。
「卵は一つのカゴに盛るな」資本の分散投資でリスクコントロール!
株式投資のリスク軽減・コントロール策は様々ありますが、最も基本的なリスク軽減・コントロール策は分散投資です。これは「卵は一つのカゴに盛るな」という格言で示されるリスク回避方です。
分散投資は手持ちの資本をできるだけ異なった資産に分散して運用するリスク海保方法
資本が分散投資される対象の資産は、不動産、株式、保険など多岐にわたりますが、金や宝石、会員券なども資産に含まれます。このリスク回避方は、以前から投資家にはよく知られていたことでした。
「ドル・コスト平均法」(定時定額購入)で時間も分散!リスクも分散
一般的に分散投資には銘柄を分散させる方法と、買うタイミングを分散する時間分散の方法があります。例えば、銘柄を3つの銘柄に分散する三分割法や、資金の12%ずつ8つの銘柄に分散する考え方などがあります。
時間分散は1銘柄を一度に買うと高値掴みする危険がありますので、時間分散することで買値を平均化させる効果が見込めます。
これを理論化し計算によって証明したのが 1952年にハリー・マーコウィッツ氏が発表した論文「現代ポートフォリオ理論」で、マーコウィッツ氏はこの功績で1990年にノーベル経済学賞を受賞しています。そしてこの「現代ポートフォリオ理論」は現在でも分散投資のバイブルとして読まれています。
株式投資はリスク管理方法も多様! 情報を集め経験を積めばリスクを最小化できます
株式投資の場合は分散投資以外にもリスク軽減・コントロール策は様々あります。投資先を変えること、相場の状況により株式組み入れ比率を増減させること、同様に利益確定比率を増減させること、ロスカット率を増減させることなどです。これらにより、利益確定の額を増やし損切の金額を抑えることができます。
また、ヘッジとアービトラージ(裁定取引)も有効なリスク軽減・コントロール策です。
特に、アービトラージ(裁定取引)はショートとロングを両建てする手法で、ギャンブルでは絶対に有り得ない決定的なリスク軽減・コントロール策です。現実にアービトラージ(裁定取引)はヘッジファンドだけではなく個人投資家もペアトレードとして活用しています。
株式市場も「偶然性」をリスクとして排除する!
株式投資で偶然が関わるものといえば、天変地異やシステムトラブルがあげられます。ネット証券ではインターネット通信障害が起こるなど、偶然、投資環境が損なわれることがリスクになります。平等な環境がなくなり公平性が保てない状況がリスクなのです。
株式投資にも「偶然性」はある!天変地異や偶然起こるシステムトラブル
例えば、大地震です。東日本大震災の発生により日経平均株価は大きく下落しました。台風などはある程度予測できるとしても、地震などの天変地異は株式投資にとっては偶然性が高い出来事です。
或いは、誤発注で株価が急騰するのも偶然性が高い出来事です。誤発注で株価が急騰したジェイコム株で何億円かを儲けたネットトレーダーの話は有名です。勿論、誤発注で株価が急騰するのを見逃さなかった訳ですから、全てが偶然と言うつもりはありません。
同様に東証がシステムダウンし売りが殺到したこともありましたが、これも偶然性が高い出来事です。ですが、これらのトラブルはギャンブルでも起こりうるものです。逆に言えば、通常の株式投資で偶然性が全面的に関わる場面は多くないのです。
株式市場は「偶然性」を排除し公平な投資活動を保証!リスクも情報も全てオープン
株式投資にも偶然性はゼロではありません。しかし株式投資は、偶然性と言うよりも、公平性と必然性に支配された経済活動です。株式投資には業績・チャート・テクニカル指標・需給など他の株価決定要因も多く偶然性で株価が決まる要素は低いと考えられます。
株式投資の勝ち負けが偶然に見えているのは、それらの隠された要素、必然性が見えていないからです。
むしろ投資の世界では公平性を保つために偶然性の要素はできるだけ排されています。インサイダー取引が犯罪となるように、情報も基本的にオープンです。従って、ギャンブルの勝ち負けの決定要因の大部分が偶然性であるのに対して、株式投資の勝ち負けに占める偶然性の割合は格段に低いと言えます。
株式投資とギャンブルのリスク管理の考え方まとめ
株に対して、ギャンブルの一種というイメージがいまだに根強くあります。たしかに投資とギャンブルは「お金を稼ぐ」という表面的な結果だけを見れば、まったく同じ行為のように見えます。しかし両者はまったくの別物でした。
ギャンブルに分散投資はない! 偶然性を管理すべく得意な分野に集中するのが上策
仮に、この様な分散投資をギャンブルで行ったとしても、それほど効果は見込めそうにはありません。むしろプロのギャンブラーは自分が得意な分野に集中して腕を磨きます。ポーカーでもバカラでも大小でもです。
身近なところを考えてみましょう。例えば、競馬で馬券を分散して買ったとしても、当たり馬券が増えるとは限りません。また、パチンコで一度に3台の台を掛け持ちしたとしても、確変の大当たりが出易いと言うことは考えられません。むしろ、競馬もパチンコも掛金が嵩んで損失が増えるのではないでしょうか?
投資家は分散投資でリスク管理! 市場も偶然性はリスクとして排除!
一方で株式投資は情報管理、リスク管理、コントロールが基本。市場も情報が平等に公開され、健全な投資環境が構築されることで、公平性を担保しています。投資家も偶然性をリスクとしてコントロールしますし、市場も偶然性を健全な投資環境の敵として排除しています。
株式投資において、偶然性はリスクとして排除されるべきものなのです。一方でギャンブルはコントロールの余地を極力排することで、公平性を担保しています。この公平性に対する考え方の違いが、2つの活動のリスク管理の違いに現れています。