株式投資とメンタルの関係は古くて新しいテーマですが、株式投資の成功にメンタルが大きく影響していることは間違いありません。そこで、メンタルコントロールの方法と損失の恐怖やバイアスに負けないルール作りについて考えて見ます。
株式投資でメンタルコントロールは可能なのか?
メンタルコントロールに大きな影響を与えるのは恐怖の心理で、株式投資の世界で言えば損切に対する恐怖です。つまり、株式投資に於けるメンタルコントロールは損失への恐怖との闘いとも言える訳です。
メンタルコントロールは損失への恐怖との闘いだ
株式投資の恐怖が損失にあるとして、それでは恐怖心をコントロールすることは可能なのでしょうか?
どんなに高度な知識や技術・ツールがあってもメンタルコントロールができていなければ、投資家の本能である損失への恐怖に負けることになります。実際にネットトレードの経験者であれば誰もが経験していますが、損切の時にどこで売るのか逡巡する時の気分は嫌なものです。特に、損切を決断した後にも秒単位でどんどん安くなる場合は恐怖を覚えることさえあります。
損失の恐怖に打ち勝つポイントは「把握」にある
果たして、この様な損失への恐怖の心理をメンタルコントロールできるのか否か、肝心のことは多くの書籍やネット情報には書かれていません。
只、多くの書籍やネット情報で強調されていることは、優位性のあるトレードを一貫する信念を持つことと常にリスクを許容するマインドを持ち続けることです。
リスクの範囲を把握することで、恐怖をコントロール下に置こうというのです。これが損失の恐怖を克服するポイントです。
損失の恐怖に打ち勝つには「把握」して「対策」するしかない
そこで、考えられるのはリスクを許容するマインドを持ち続けるためには、投資家自身が相場のシナリオを予測することしかありません。何故なら、相場に限らず現実の生活に於いては予測することにより恐怖は和らげられています。
例えば、天気予報です。100年前と比べれば現在の天気予報は遥かに当たります。
特に、台風の場合を考えて見ますと100年前に於いて台風はいきなり来るものでしたが、今は明日の何時頃にどのくらいの規模の台風が来るのか分かっています。従って、台風に対する恐怖は100年前の比ではありません。台風が来ると「把握」して、被害を抑えるための「対策」を整えているからです。
地震に於いても同様の予想が可能になれば、地震に対する恐怖も遥かに小さくなる筈です。
損失の被害範囲を「把握」すれば「対策」が打てる!これで恐怖はコントロールできる
ビジネスにおいても経済の先行き予測や相場の予測など様々な分野で専門家の予測が行われています。
そこで、株式投資に於いても投資家自身で相場を予測してみることが重要です。70%前後の確率が期待されるメインシナリオ、30%前後の確率がありそうなサブシナリオ、そして、数%以下の確率しかないリスクのシナリオを投資家自身が予測するのです。
損失を把握していれば、恐怖はコントロールできます。どれほどの被害が起こるのか把握していないから、怖いのです。
しかしこの様な予測の癖を付ければ大抵の出来事は予測の範囲内に収まります。例えば、トランプ候補の勝利も30%前後のサブシナリオに入っていた筈ですから、それほど驚かなかったかもしれません。そして、この様な予測はヤマ勘で作ることはできませんから、投資家が自身の投資に対して常に理論的な背景を持つきっかけにもなるのです。
損失の恐怖や認知の歪みに負けないために投資の「ルール」を作ろう
投資をすると認知の歪み=バイアスがかかると理解しよう
バイアスの本来の意味は偏りを意味し、思い込みや思想などから考え方等が偏っていることにも用いられます。株式投資に於けるバイアスとは、本来、株価はフェアバリューで判断すべきですが、自身の買値を基準にしてしまうのがバイアスの1つです。例えば、500円で買った銘柄が400円に下落している場合、フェアバリューを基準にせずに400円は下げ過ぎと判断するのはバイアスが原因です。
このようなときに認知の歪みに気付かずに無造作にナンピンを打ったりすると、被害が何倍にも膨らみます。
現状維持を望む気持ちでさえ認知の歪みを生む
また、株式投資に限らず何事に於いても人間には、現状を維持したいというバイアスがかかっています。例えば、株価の下落局面では、更に下がり続けるのではないかという現状維持バイアスが掛かります。また、株式投資を300万円の資金でスタートしたとしますと、スタート時の資金を下回りたくないという現状維持バイアスがかかり易くなります。
更に、本来は利益確定も損切も同じ売りの筈ですが、利益確定は早めに損切は先延ばしのバイアスがかかり易く、想定外の事態が発生した時には理論的に考えるよりも咄嗟に思い付いた行動を優先するバイアスがかかり易くなります。
損失の恐怖や認知の歪みへの「対策」それが自分だけの投資ルール
株式投資に於いては誰もがメンタルコントロールに注意し、バイアスのかからない状態で冷静に相場に向かいたいと考えています。しかしながら、投資家が相手をしているのも投資家、生身の人間の欲と欲がぶつかる株式市場に於いて、常に冷静さを保つのは神業かもしれません。
そこで、登場するのが自身の行動の規範となる投資ルールの設定です。
ルールは「負けない」ためにある!「勝つ」ために更新し続けよう
「負けない」ために自分が確立した投資のルールに則り投資を行う!
例えば、1,000万円の株式投資で1銘柄当たりの投資金額上限を12%の120万円で8銘柄と決めた場合は、どんなに自信がある銘柄に出会った時でも、120万円を超えて投資してはいけません。このルールは例え話ですが、このルールを確立するまでの間に自分なりに失敗や損失を重ねてきた結果、この投資のルールに辿り着いたからです。
一時の感情や投資状況によってルールを変えてしまえば、それはルールではありません。ルールは失敗から学ぶもの。ひどく「負けない」ためにルールを守ることが大事なのです。
ルール破りは自分で自分を裏切る行為!過去の経験から学ぶことが大切
もう1つ、例示すると、デイトレードと決めたからには、どんな局面でも翌日までホールドしないことが重要です。ルールを破ってホールドした結果、塩漬け状態になったり、余裕資金が無くなり絶好のタイミングで他の銘柄に投資できなくなったりするからです。
もちろんホールドして翌日上げたり成功することもあります。しかし、これはリスク管理です。大きなリスクを避けるために(ホールドして大損したことがあるために)、ホールドしないという自分ルールが作られたのです。自分で自分を裏切ってはいけません。
ルールに縛られるのでは無く「勝つ」ためにルールを更新し続けよう
ただしルールを破ることと、ルールを更新していくことは全く別のことです。自分で確立したルールはあくまでも暫定的な「負けない」ための法則にすぎません。市場は生き物です。変わり続ける市場と、自分自身のために、ルールを更新し続けていく必要があります。投資ルールに完成は無いのです。
ルールに縛られるのもNG! 株式市場も自分自身も変化しています
株式投資で常に勝ち続けることはできません。ルールに従っていても、ミスをしたり、損失を被ったりします。そんな失敗からルールは更新され続け、洗練させていかなければなりません。止まったら進歩は無いからです。
ルールを「破る」のでは無く「更新」する!失敗と反省から学んで進化する!
それでは、何がルール破りで、何がルールの更新なのでしょうか? 私はポイントは失敗から学ぶ姿勢にあると思います。失敗するから、損失を出すから、その失敗を繰り返さないために、ルールを更新するのです。
成功し続けていれば、それはルールがうまくいっているということですから、変える必要は無いのです。失敗するからこそ、進化する必要があるのです。
この様な投資ルールで決めるべき事項としては、投資金額・投資期間(デイトレードか中長期かなど)・対象銘柄(市場など)・投資方法(ETF・信用取引・先物を含むか否か)・利益確定値幅・ロスカット値幅などです。
株式投資の成功はメンタルから!偉大な先人に学ぼう
最後に、古今東西の賢者の言葉を参考にしつつ人工知能AIやロボットの登場でますます無機質になっている現在の相場に於いて、個人投資家のメンタルコントロールについてのヒントを探してみましょう。
株式投資のメンタルコントロールに関する賢者の言葉
投資の世界で著名な世界の賢者の言葉の中から、特に、メンタルに関する言葉を選んでみました。それぞれに意味の深い言葉です。
世界第二位の富豪ウォーレン・バフェットの言葉
「投資家を破滅させるのは経済ではない。投資家自身である」
最後の相場師・是川銀蔵の言葉
「相場の道、すなわち孤独に徹すること」
ヘッジファンドの帝王ジョージ・ソロスの言葉
「私が確かに人より優れている点は私が間違いを認められるところです」
著名な投機家ジェシー・リバモアの言葉
「感情をコントロールせよ、忍耐強く待て、失敗から学べ」
大投資家ベンジャミン・グレアムの言葉
「感情をコントロール出来ないならば投資のプロセスには向いていない」
伝説の相場師・本間宗久の言葉
「焦るな、怒るな、油断するな」
【メンタルコントロールに関する言葉】では自分自身や孤独との闘いについての言葉が目立ちます。特に、最近のネットトレードに於いては人に相談する機会は全くありませんから、ますます、メンタルコントロールの重要性が増しています。
次に特に感情を揺さぶられる損失を確定させる行為、いわゆる「損切り」に関する言葉を見てみましょう。
株式投資の損切りに関する賢者の言葉
短期売買で勝ち続けたウィリアム・ギャンの言葉
「負けることへの恐怖こそが負けの元凶となる。負けを背負うことに耐えられないと、結局、大きな負けを背負うことになるか、絶好のトレードチャンスを逃してしまうことになる」
14歳でデイトレの道に進んだゲイリースミスの言葉
「すべての取引について最悪の事態に備え、うまくいかないと想定することは有利だと私は考える」
【損切に対する言葉】については相場に損失はつきもので、損失を乗り越えた先に利益があることを示唆しています。さすが古今東西の著名投資家の言葉は意味が深いですね。
株式投資の成功はメンタルからまとめ
ここまで株式投資におけるメンタルコントロールについて離してきました。本項で大事なことはメンタルコントロールにしても投資ルールにしても、ルールを作ることだけが目的ではないことです。投資家が自分自身で決めたメンタルコントロールや投資ルールを実践すること。どんな相場状況に於いても例外なく守り、さらに失敗したときに反省して学ぶことが重要です。
メンタルをコントロールするために自分ルールを作り更新していこう!
自分なりの投資ルールを確立し、実践し、更新することこそが肝です。そのことを継続することであなたには勝ち癖が付いてきます。自然と反省し、失敗から学び、大損することが少なくなります。その結果、リスクをコントロールし、恐怖を克服できるようになるのです。あなたなりの負けない投資パターン、投資ルールを確立すれば、利益は後からついてきます。