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探偵業法とは?違反するとどうなる?探偵がやってはいけない7つの事

探偵業法とは?違反するとどうなる?探偵がやってはいけない7つの事

探偵業法とは、探偵が業務を行う上で絶対に守るべき法律です。探偵業法に反する行為を行なえば、刑事罰や行政罰を受けなくてはなりません。

今回はそんな探偵業法でやってはいけない事や違反の罰則について紹介します。

探偵業法とは?

探偵業法

「探偵業法」は正式には「探偵業の業務の適正化に関する法律」と言い、探偵業務が適正に行われるために、そして個人の権利や利益を保護するために平成19(2007)年に施行されました。

この法律が施行された背景には、悪徳探偵業者の存在があります。

例えば、高額な調査費用を請求して依頼主とトラブルになる業者や調査結果を元に恐喝をする業者、違法調査をする業者などがあり、そういった状況を改善する目的で探偵業法が制定されました。

探偵がやってはいけない7つのこと

探偵_やってはいけないこと

探偵業法では探偵の業務内容や契約時にやるべきことのほかに、やってはいけないことを定めていて、違反した場合は罰則を設けています。

探偵がやってはいけない7つのことをご紹介します。

無届けでの探偵業の営業

探偵業を始めるときは、探偵業法第4条で管轄の警察署を通して各都道府県の公安委員会に届け出ることを義務づけています。

探偵業法第4条
探偵業を営もうとする者は、内閣府令で定めるところにより、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に、次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。

 

1.商号、名称又は氏名及び住所
2.営業所の名称及び所在地並びに当該営業所が主たる営業所である場合にあっては、その旨
3.第一号に掲げる商号、名称若しくは氏名又は前号に掲げる名称のほか、当該営業所において広告又は宣伝をする場合に使用する名称があるときは、当該名称
4.法人にあっては、その役員の氏名及び住所

無届けで探偵業を営むと、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

なお、1つの探偵事務所に複数の営業所があり、いくつかの都道府県にまたがっているときは、それぞれの営業所の所在地を管轄する警察署を経由して公安委員会に届け出なければなりません。

届出が受理されると「探偵業届出証明書」が交付されます。この証明書を事務所内の見やすい場所に掲示することも探偵業法で定めています。

差別に繋がりかねない調査

探偵業法第9条では、差別に繋がりかけない調査はしてはならないとしています。

探偵業法第9条
探偵業者は、当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない。

探偵は素行調査や人探しなどの依頼を受けますが、「子どもの結婚相手が同和地区(部落差別地区)の出身かどうか調べてほしい」「自社の内定予定者の本籍や家族構成、親の職業などを調べてほしい」といった依頼は差別につながる可能性があるため、依頼は受けないことになっています。

調査で他者の私有地に侵入

住居侵入罪

探偵は時に張り込みや尾行で決定的瞬間を捉えたいと思うあまり、つい他人の私有地に入ってしまうことがあります。

しかし、これは「住居侵入罪」に該当し、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

なお、私有地には家屋だけでなく自宅の庭やマンションの共有部分、人が住んでいない別荘なども含まれるので注意が必要です。

犯罪を助長する調査

ストーカー目的で人を探してほしいという依頼や、DVの被害者を追いかけるための調査は、さらなるストーカー被害・DV被害を生むことになります。

そのため、ストーカーやDVといった犯罪行為を助長する可能性がある調査を、探偵は受けないことになっています。これは探偵業法第6条の規定によるものです。

探偵業法第6条

「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない」

ストーカーやDV加害者の依頼は、この「生活の平穏を害するおそれ」に該当するため、探偵は依頼を引き受けません。

また、探偵は調査が犯罪を加担しないよう、依頼を受ける段階で調査の目的や動機などを詳しく聞き取るようにしています。

例えばストーカーやDV目的が疑われる依頼の場合は、「探したい人と依頼主との関係」「なぜその人を探しているのか」「いつから、どんな理由でいなくなったのか」などを細かくヒアリングしていきます。

探偵は普段からさまざまな調査をしているので、依頼主の言動から怪しい点や挙動不審を見抜く力に長けており、違和感があればたとえ依頼者が本物のパートナーであったとしても、依頼を引き受けません。

さらに依頼主と契約する際には、調査結果をストーカーやDVといった犯罪行為に使用しない旨を記した「誓約書」に署名をしてもらいます。

署名を求めることで依頼主の意思を再確認し、犯罪を未然に防ぐ目的があります。

官名詐称などの成りすまし

官名詐称

探偵は作業員などに変装して張り込みをすることがありますが、警察官を名乗ることは「官名詐称」に該当するため軽犯罪法1条15号で禁止されています。

また、電話口で警察官と名乗って個人情報を聞き出そうとしたり、制服を着て成りすましたりすることも違法です。

官名詐称ではありませんが、宅配業者を装って住所を聞き出す調査や床下の害虫調査と言って住居内に入るといった行為も違法になります。

探偵は法に触れないように注意し、調査をしています。

守秘義務の違反

探偵業法第10条で「探偵は業務上知り得た情報や秘密を漏らしてはならない」と定めています。探偵業を辞めた後でも守秘義務はあるので、秘密を漏らしてはいけません。

また、撮影した画像のデータや作成した文書、それらを保存したものなどの不正利用防止や紛失などがないように努める必要があります。

探偵業法第10条
探偵業者の業務に従事する者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。探偵業者の業務に従事する者でなくなった後においても、同様とする。

2探偵業者は、探偵業務に関して作成し、又は取得した文書、写真その他の資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。)について、その不正又は不当な利用を防止するため必要な措置をとらなければならない。

調査で知り得た情報を無断で公開することはプライバシーの侵害にも該当します。それだけに、情報の取り扱いには細心の注意を払っています。

別れさせ・復縁工作

別れさせ工作

別れさせ工作とは交際している男女に対して、別の異性(工作員)を接近させ、気を引くようにして別れるように持っていくことです。

一方、復縁工作は、復縁したい相手に工作員を近づかせて気持ちを戻すように持っていく方法です。

どちらも事業として行っている業者はありますが、別れさせ工作や復縁工作は公序良俗に反することであり、手法によっては法律に触れる恐れがあります。

また、依頼を受けた業者だけでなく依頼をした側も処罰の対象になり得る可能性があります。

そのため、日本調査業協会では探偵業を営む者に対して「別れさせ・復縁工作は依頼を受けない」「広告として掲載しないこと」を徹底しています。

別れさせ・復縁工作は探偵業務ではない

そもそも別れさせ・復縁工作は、探偵が行う業務ではありません。
例えば夫(A男)の不倫に悩む妻が、「不倫相手のC子と別れるようにしてほしい」という依頼をするケースで見てみましょう。

別れさせ工作では、わざと別の女性(Y)をA男に近づかせてホテルに誘い込み、決定的瞬間を隠し撮りして写真に収めます。その後、A男と不倫相手のC子がデートしているところにYとグルになっている男性が現れて、A男に「俺の女に手を出した」と脅すことで不倫相手であるC子の気持ちが冷めるように持っていくというものです。

これらの一連の行為の中には探偵が行うべき業務はなく、また、探偵業法が定める「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない」に違反しています。

そのため、探偵は別れさせ・復縁工作をすることは認められていませんし、多くの探偵業者は行っていません。

探偵業法に違反するとどうなる?

探偵業法違反_罰則

刑罰を科される

探偵業法に違反すると、その内容に応じて刑罰が科されます。一部をご紹介します。

内容 罰則
届出を出さずに探偵業を営んだ場合 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
届出書や添付書類に虚偽の記載をした場合 30万円以下の罰金
変更・廃止の届出書・添付書類を提出しなかった場合や虚偽の記載をして提出した場合 30万円以下の罰金
名義貸しをした場合 6ヶ月以下の朝夕または30万円以下の罰金
契約締結時に契約内容を明らかにする書面を交付しなかった場合 30万円以下の罰金
都道府県公安委員会による指示に違反した場合 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
都道府県公安委員会による営業停止命令に違反した場合 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
都道府県公安委員会による営業廃止命令に違反した場合 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

(参考:警察庁生活安全局 探偵業について

営業停止命令を受ける

探偵業法に違反したときは、公安委員会が6ヶ月以内で営業の停止命令を出すことができます。

たとえ6ヶ月間でも依頼が受けられないと収入が得られませんし、営業停止命令が出された探偵事務所ということでマイナスの評判が広がってしまいます。

結果的にその後の営業にも悪い影響を与えることになります。

営業廃止命令を受ける

探偵業法では次に挙げる欠格事由に該当する人が探偵業を営んでいる場合に、公安委員会から営業廃止を命じられます。

  • 1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 2.禁錮以上の刑に処せられ、又は探偵業法の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
  • 3.最近5年間に営業停止命令・営業廃止命令に違反した者
  • 4.暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  • 5.心身の故障により探偵業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
  • 6.営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が1から5又は7のいずれかに該当するもの
  • 7.法人でその役員のうちに1から5までのいずれかに該当する者があるもの

参照:警視庁 探偵業の業務の適正化に関する法律等の概要

処分の内容が公表される

探偵業法に違反した場合は、公安委員会から必要な措置を取るように指示が出されます。また、違反の内容によって探偵業の営業停止や営業廃止命令が出されます。

そして、このような指示や営業停止・廃止命令が出された探偵業者は罰則が科されるだけでなく、都道府県の警察または都道府県の公安委員会のホームページに探偵業者の名称と代表者の氏名、所在地、処分内容などが公表されます。

公表は処分が行われてから3年間で、その期間は誰もが見ることができるため、探偵業の営業にマイナスの影響を与えます。

探偵業法とはまとめ

探偵はプライベートな部分に立ち入る調査を行うことが多い職業です。

そのため、業務で知り得た情報や秘密を漏らしたり、違法は手段で調査して調査対象者の生活を脅かすような調査をしたりすることがあってはなりません。

以前は調査のために住居侵入をしたり、調査で知った情報を元に恐喝をしたりといった不適切な活動をする探偵業者がいました。

そこで、探偵業務の適正化を図るために平成19(2007)年に探偵業法が施行されました。

探偵業法では探偵がやってはいけないことや違反したときの罰則などが細かく定められています。

探偵は法令を守りながら、依頼者や調査対象者の人権に配慮しつつ調査を行っています。

なお、探偵業は公安委員会に届出を提出して開業しています。事務所や営業所には探偵業届出証明書を掲示することが決められています。ホームページにも開始届出証明書番号が記載されているので、依頼する前に確認するといいでしょう。

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